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ナンバー938の呟き

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まったくのアホながら わずかばかりの知性をふりかざしてみんとて 呟くのである

book memory of 2005

ちょっと早めだけど2005年の読書についてまとめてみよう。
グレッグ・イーガンの「万物理論」とアリステア・レナルズの「啓示空間」は、ともに長めの話題作。
 「万物理論」は、読んでいる途中はイーガン独特の世界をじっくり楽しめる。SF的なアイディアもいっぱい詰め込まれていて、満足感も高い。ただし読み終わって何がどうなったのか覚えていないほど、難解な部分もあった。
 「啓示空間」は、高千穂遥のダーティー・ペアシリーズをちょっとだけ大人向けにしたような話。ボリョーワとクーリの宇宙活劇といってしまえばそうかもと思う。宇宙には高度な知能生物が存在できる惑星がいっぱいあるのに、どうして人類しかいないのだろうというアイディアを膨らませたストーリー。しかしどうしてこんなに長いのだろう。99万年前アマランティン族を滅亡に追いやったサンスティーラーとの人類の存亡を賭けた死闘のラストまで伏線をひっぱりひっぱりで、しっかり読みきれるだけの面白さはあるが、期待はずれかなぁ。
 マイケル・クライトンの「恐怖の存在」はテクノスリラーとしてよりも「地球温暖化は本当か?」という怪しいノンフィクションとして楽しめる。ある意味トンデモ本かもしれない。小説としては人物が類型的すぎたり、メッセージ色が強すぎたりで不出来かなと思う。ただし、環境保護運動は利益を求めるビジネスのひとつの形であるのも事実で、エコだとか環境にやさしいとかは、ヒトという類人猿のエゴにすぎないという問題を提起しているあたりには共感を得た。
 ジョン・クリストファーといえば「草の死」だろうが映画化の話題もあって「トリポッド1・2・3・4」が翻訳された。クリストファーの作品ではいまも読みつがれているジュヴナイルだそうだが、イギリス系の作家にもれずさりげなく暗い表現や、人の命の重さを感じさせる佳作。やはりクリストファーは第二次世界大戦という戦争の重さを背負った作家なのだろう。大人向けのはずの「タフの方舟」の方が子供向けに思えてしまう。
 ジョージ・R・R・マーティンの「タフの方舟1・2」は、言葉づかいは丁寧だが、いんぎんでずるがしこい宇宙悪徳商人のタフが活躍する連作短編集。読んでいて楽しいし、SFの楽しさというのはこういうところにあるのだなぁと実感した。純粋に楽しめる。
 チャールズ・シェフィールドの「マッカンドル-航宙記」「太陽レンズの彼方へ」は、ともに天才物理学者のマッカンドル-と相方の女性船長ジーリーとのかけあい漫才ミステリSF。さしずめ書き手のジーリーがワトスン君だろうか。宇宙を舞台にしたミステリ物。ハードSFのようにみえて、誰でも楽しめる宇宙SF。シェフィールドは他のシリーズももっと翻訳されてもいいのだろうけれど、イギリス系作家の翻訳は独特の言い回しがあって難しいのだろうか。
by kkusube | 2005-12-03 09:02 |

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