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ナンバー938の呟き

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まったくのアホながら わずかばかりの知性をふりかざしてみんとて 呟くのである

捜査

「捜査」ハヤカワ文庫SF306 271p
 (2006/4/22~5/14)

 78年8月15日発行。8月27日に購入。本国では59年に刊行され、翻訳はSFブームに乗ってレムが徐々に文庫で発行されだした時期である。
 犯人が不明のまま捜査が失敗するという奇妙なミステリー。薄めの本にもかかわらず、楽しく読みすすめられる話でもなく、読んでいると本文から妄想の世界へ入り込んでしまって、何度も同じ箇所をなぞっている状態に陥ることもしばしば。捜査員たちの悪夢にも似た謎の渦中へまきこまれ、読むほうも気持悪さを感じる。
 「人間の理性では理解できない現象に、人がどう対処するか、そして結局はどんな解釈を与えてみてもそれを説明できないことがある」というレムの作品に共通するテーマが描かれているというのだが、つまらなくはないが楽しめる話でもない。
 死体消失が頻発し、ロンドン警視庁のグレゴリィ警部補が捜査を命じられる。現場に手がかりらしいものは無く、どうも上司である主任警部の友人のシス博士が関わっているらしい様子もあるのだが、謎は解明されることが無いまま捜査は終わる。読者に犯人を推理されるという形式のミステリーでもなく、そういう不条理を無理やり理解できる形で終わらせるのが現実なんだということがいいたいのだろうかとも思う。
 同じようなテーマで再度「枯草熱」という作品を書いていることから、レムのこだわりのテーマがあるのかもしれない。
 訳者の深見弾は「カフカばりの作品」と記しているが、「変身」の主人公の名前がグレゴール・ザムザなのは何かの類似なのだろうか。
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by kkusube | 2006-05-14 20:29 |

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