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ナンバー938の呟き

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まったくのアホながら わずかばかりの知性をふりかざしてみんとて 呟くのである

エデン

「エデン」早川書房 269p
 (2006/5/14~5/17)

 80年1月31日発行。23歳になった2月2日に買った本である。タルコフスキーの「惑星ソラリス」という映画が公開されて、レムの作品がいくつか続けて翻訳されるようになり、海外SFノヴェルズというハードカバーシリーズでの出版であった。
 シリアス・ファンタジーの長編小説で、1959年に刊行された宇宙SF3部作の第一作。この時期から1964年の「砂漠の惑星」までが、いわゆるSFらしい作品を積極的に執筆していた時期であり、作品としても脂の乗っていた時期である。
 エデンという題名の惑星が舞台である。当然そこはエデンの園であるはずなのだが、実に奇妙な進化の袋小路の世界で、その惑星の不時着した宇宙船の乗組員たちの惑星探検が描かれている。
 レムの作品の中では難しい講釈が少なく、すんなりと読める。ただし設定は舞台劇のようでもある。
 宇宙船も登場するし、エデンという惑星は理解しがたい異世界ではあるが、宇宙船の乗組員は、コーディネーター(いったい何をする人?)、技師、ドクター、物理学者、化学者、サイバネッテスト(ロボット屋?)の6名で、パイロットや船長も登場しない。宇宙船はオーマットという自動機械によって操縦され維持されているようだ。
 技師だけが、ヘンリックという名前で呼ばれているが、他の5人は職業名だけである。エデンという異世界の惑星に不時着した地球人が6名の役柄に振り分けられて、異世界をどう理解しようとするのかというのが、この物語のストーリーである。それぞれの理解はしっかりとした結論を示すわけではなく、それぞれの類推のままエデンよりの脱出で終わってしまう。読者にこれが正解だという回答を与えることなく、不十分な情報から推測するしかない物語となっているが、エデンのグロテスクな情景描写は、読んでいてむなくそが悪くなる。

 ここまで3作を読んできたが、どれも映像にして見たくなるような作品ばかりで、レムの表現力のすごさを感じずにはいられない。

 本国での刊行順に読んでいるので、どうしても短編や連作物は執筆時よりも随分と時間が経ってから刊行されることになる。泰平ヨンシリーズなどは比較的初期から書き継がれこの時期にはある程度まとまっていたはずだが、増補版の刊行は1971年になってからである。
エデン_a0042660_20183941.jpgエデン_a0042660_20185097.jpg
by kkusube | 2006-05-24 20:19 |

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