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ナンバー938の呟き

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まったくのアホながら わずかばかりの知性をふりかざしてみんとて 呟くのである

秀吉の枷

 加藤廣作の歴史ミステリー。ベストセラーになった「信長の棺」の二作目。歴史ミステリーといっても、隆慶一郎の「影武者徳川家康」のようなタッチの読み出すと止まらない娯楽小説。とはいっても、勝者に悲哀を!敗者に美学を!という作者の基本姿勢は、ここしばらく読んだことのない感動と感涙をもたらす。隆も第一線をしりぞいてから作家になったが、加藤も同じような経緯をたどって作家になった。しかし、定番の話を新しく作者が探り出した新ネタを加えて上手に膨らましている。ボリュームも原稿用紙にして1500枚と大きく、秀吉の本能寺の変あたりから晩年の狂気までを描いている。
 レムとは違い、しっかりとした下調べのうえでストーリー構成をたて、話を書いているので、結末がどうなるのか作者も作中人物の動きしだい、予測がつかないという、天才タイプの書き手ではないが、なっとくのできる秀吉像である。
 それにしても若くして結核で亡くなった竹中半兵衛のあまりにもかっこいいことよ。
 次作は「明智左馬助」のようである。加藤廣は、隆慶一郎がいないいま、もっと作品を書いて欲しい一人である。
by kkusube | 2006-06-08 21:08 |

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