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ナンバー938の呟き

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まったくのアホながら わずかばかりの知性をふりかざしてみんとて 呟くのである

「ガラスの塔」R・シルヴァーバーグ著

「ガラスの塔」ロバート・シルヴァーバーグ著 260p
(2007.1.8~8.17)

 娯楽読み物としてはシルヴァーバーグは標準以上の作品をたくさん書いているサービス満点の作家だ。アイディアの扱い方も心得ているし、社会意識も織り込んでいる、エロティックなサービスも必ず入っている、つまり小説の読者を掴む要素をあまさず入れて出版社の要望する長さにまとめる技術にたけている。一時は小説工場といわれ、一定の小説を大量生産していたが、その後小説工場と呼ばれるのを嫌って、ニューシルヴァーバーグと呼ばれるようになって、従来よりも問題意識を小説の中に取り込んだ作品を書くようになった。確かにシルヴァーバーグは才能のある作家だ。しかし、読み終わったあとに何も残滓が残らない、お上手な作家であることがようやく分かった。なんだかもやもやする破綻もないし、余韻が残ることもないのだ。
 凍てつく北極のツンドラ大地に、赤い肌のアンドロイドたちがシメオン・グルックの野望のために、高さ1500メートルにも達するガラスの塔を建設している。それは宇宙にむけて人類の存在を知らせる巨大な送信機なのだ。アンドロイドたちは、グルックが蛋白合成より作り出した。単純な労働はアンドロイドにまかされており、中には高度な知識を有するアンドロイドさえも出現していた。アンドロイドたちはひそかに宗教をうみだし、奴隷状態からの解放を願っていた。しかし、グルックはアンドロイドを商品以外のなにものともみなしていなかった。
 話としてはもっともっと面白くなりそうなのに、後半にゆくにしたがってしぼんでしまうのが、シルヴァーバーグの特徴である。短めの中篇あたりまでがシルヴァーバーグの旬なのだろうか。
 昔はすごいと思っていた作家だが、底が見えたような気がした。
by kkusube | 2007-08-18 08:33 |

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